SSブログ

冷静怜悧なチャイコフスキー [音楽]

IMG_0175.JPG

(今月上旬にザルツブルクに登場したドホナーニさん。ザルツブルク音楽祭のHPから拝借。)



現在、ドホナーニさんがデッカに録音した音盤の再販が真っ盛り。その中で最も期待していたのがウィーンフィルと録音したチャイコフスキーの交響曲第4番です。中古店で入手できず悶々としておりましので、再リリースのニュースを聞いた時は舞い上がってしまいました。


交響曲第4番はチャイコフスキーが37歳のときの作品。私生活では6週間の短い結婚生活の後、離婚に至るという不運に見舞われています。鬱屈した感情が全面に現れた第1楽章、小康状態を思わせる第2楽章、弦楽器がピッツィカートのみで進むユニークな第3楽章、何だかよく分からないけど吹っ切れたような明るい第4楽章と、ユニークな構成です。


ここまで感情の起伏がはっきりした曲の場合、指揮者も奏者もその音楽に酔ってオーバーな演奏になることがあります。昔舞踊を習っていた時「やり過ぎ」をよく注意されました。踊りの伴奏は箏と笙がメインで、山場が来ると篳篥や龍笛が入り大変賑やかになります。その賑やかさについ酔ってしまい、所作が仰々しくなることがありました。踊っている本人は心地良いのですがはたから見ると大仰さが目についてお腹いっぱいになってしまうのですね。


uccd9913-m-01-dl.jpg


さてその演奏。冷静怜悧なチャイコフスキーであります。大きく力強いティンパニや鋭角的な響きの金管を聴きますと、ああ、これはドホ先生だなあと思わずにはいられません。オーバーにならないように手綱をしっかりと握って粛々と音楽が奏でらます。奏者が暴走しようものなら容赦ない駄目出しが飛んできたのではないかと想像してしまうのです(これは褒め言葉)。


第1楽章、幾分ゆったりとしたテンポで金管楽器による「運命の動機」が演奏されます。結構ゆっくりまったり進むのかと思いきや、堂々とした中庸のテンポ設定を取っているので聴きやすいです。豊穣なブラスと分厚い弦はさすがウィーンフィル。しなやかでクリスタルな響きをもつクリーヴランドとはまた違った味わいがありますね。

他の指揮者ならもっとやるだろう思われる個所を本当に抑えて演奏するので最初はちょっと物足りなさを感じるのですが、曲が進むにつれ全く気にならなくなりました。夏の夜に聴きたくなる折り目正しいクールなチャイコフスキー。一押しです。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

行書のラヴェルサンセットの音楽 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。