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チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 [音楽]

Bayside Beach Saka



Piano Concerto No. 1 in B-flat minor, Op. 23
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst, conductor
Lang Lang, piano
October 2014, Severance Hall (Gala Concert)


潮の匂いに包まれながら波打ち際を歩いていると、疲れきった細胞が若返り、精神が瑞々しさを取り戻してゆくような感覚になる。豊かな湧水に囲まれて育ったせいか、水のある場所は本当に気持ちが和らぐ。
波の音と一緒に頭の中に浮かんできたのは、先日から聴き続けていたチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の第2楽章だった。スミスさんの温かいフルートの音色、ランランの抒情性に溢れた柔らかなタッチがありありとよみがえるので、自分でも驚いてしまった。イヤフォンで音楽を聴いているわけでもないのに…。


何で急にチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番かというと、先月ヴェルザー=メストの悲愴を聴いて以来、頭の中はすっかりチャイコフスキーなのだ。ヴェルザー=メスト独特の解釈に完全に心を奪われ、ケン・ラッセル監督の『恋人たちの曲 悲愴』を鑑賞した。(なんだか去年のマーラーとそっくり。マーラーの6番を聴いた後、これまたケン・ラッセルの『マーラー』を観たのだった。)その映画でピアノ協奏曲第1番が効果的に使われていたので、録音を探していたところ、ランランをソリストに迎えた演奏会があったのを思い出したのだった。


第1楽章。誰もが知っている冒頭のホルンのメロディはスマートにさらりと奏でられ、序奏は大変爽やかな印象だ。歌舞伎の世界から出てきたような華やかさを備えたランランのピアノは、強靭で自信に満ち溢れた響き。そんなに強打しなくてもいいのに…と感じる箇所もあるのだが、水際立った華麗なピアニズムにはただただ圧倒される。第2楽章。牧歌的なフルートの音色を聴いていると、身体がふわふわ浮き上がりそうな甘い情緒にとらえられる。フルートを受けた独奏ピアノの内省的な旋律を、ランランはとろけるようなタッチで奏でていた。彼が派手なパフォーマンスだけの人でないことがよく分かる演奏だ。躍動感あふれる第3楽章はキレのある独奏ピアノの独擅場。コントロールが効いて粒立ちがよく、オケとの一体感も心地よかった。

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コメント 4

T.D

爽やかで良いお写真ですね。朝独特の透き通った空気感を感じます。

チャイコフスキーのピアノ協奏曲は2番を聴きましたが、1番も良さげですね。ランランとマエストロは音楽的に目指す方向が違うように思うのですが、シナジー効果を生んでいるということでしょうか。ショパンのピアノ協奏曲1番もそのような印象を抱きました。

"歌舞伎の世界からでてきたなような華やかさ..."というのは、気になりますね。menagerie_26さんに歌舞伎を連想させる演奏とはどのようなものなのでしょう。

マエストロのチャイコフスキーは、しつこくなくて良いです。ガチッとした程よい堅牢さを持った音楽が、気持ちよくはまるのでしょうね。
by T.D (2016-10-08 13:50) 

menagerie_26

T.Dさん

ありがとうございます。オフシーズンで人が少なく、思う存分写真が撮れました。

マエストロとランランは、古くからの付き合いのようですね。”シナジー効果”、 確かにそのような気がします。音楽性は違っても、不思議とあまり違和感がありません。お互いをよく知っているからこその演奏でしょうか。

“歌舞伎の世界から出てきたような…”と書いたのは、ショーマンシップの面だけではありません。迷いのなさやキレの良さを下支えする、しっかりとした”型”のようなものを感じたからです。”型”があるからこそ、鍵盤の上で大胆に、自由自在に個性を発揮できるのだろうなあと思うのです。

チャイコフスキーはしつこくなると苦手なので、マエストロの解釈はちょうど良いですね。


by menagerie_26 (2016-10-08 23:42) 

T.D

朝の海岸ということは、海に近いところにお住まいなのでしょうか。砂浜をぶらり歩けるのは贅沢で良いですね。

マエストロとランランの音楽性が絶妙に迎合し合って、唯一無二の釣り合う箇所に落ち着いているのでしょうね。ランランは芯の太い演奏家なので自身の"型"については確立したものがあるようですし、それはマエストロも変わらないでしょう。今後もタッグを組んでほしいものです。ラフマニノフの2番なんて素敵だと思うのですが、ヴェルザー=メストがあえて手を伸ばす曲ではなさそうですね。
by T.D (2016-10-09 23:18) 

menagerie_26

T.Dさん

実はそれほど近い場所ではないのですが(汗…良い気分転換になっています♪

マエストロとランランの共演は、いつも絶妙のケミストリーが生まれますよね。4年前のバルトークの2番は切れ味鋭く、面白い演奏でした。ラフマニノフの2番、いいですねえ。ランランの音楽性にとても合っていると思うので、是非聴いてみたいものです。マエストロはラフマニノフをめったに取り上げませんね…コンチェルトの3番の伴奏しか聞いたことがないです。


by menagerie_26 (2016-10-10 23:31) 

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