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ブラームスの詩魂 - Johannes Brahms Cycle No. 4 - [Johannes Brahms Cycle]

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Symphony No. 3 in E minor, Opus 90
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst
October 2014, Musikverein


クララ・シューマンはブラームスとの書簡の中で、交響曲第3番について次のように述べている。
「なんという作品!なんという詩魂!全体を通して流れる、調和ある情調!すべての楽章があたかもひとつの流れのように、ひとつの心臓の鼓動のように、各楽章が宝石です。」(『ベルトルト・リッツマン編、原田光子編訳『クララ・シューマン ヨハネス・ブラームス 友情の書簡』P. 261)


今回のブラームスチクルスの録音そのものが、私にとっては宝石のようであり、それぞれが独自の輝きを見せている。どれかひとつを選ぶなんて絶対にできないのだけれど、ひときわ光彩を放っているのが交響曲第3番だ。目下いちばんのお気に入りでもある。2014年の初回の感想を読み直してみると、放送が始まった途端にラジオに釘付けになっていたようだ。


第1楽章からとろけさせるような耽美的な響きで聴き手を圧倒する。16人の第1ヴァイオリンが一つの楽器のようになり、ブラームスの心の奥底に潜む感情を、艶かしい響きでもって吐露する。ヴェルザー=メストは提示部の繰り返しを省略し、ドラマティックに流麗に展開部へと進めてゆく。その展開部で、チェロが悲痛な面持ちで旋律を歌い上げる部分、2014年にラジオで初めて耳にした時、きっとオケを相当煽っているに違いないと感じていたのだけれど、予想どおり激しいタクトさばきだった。(なんだか答え合わせをして正解した気分^^) 


マッケルウェイ氏のたおやかなクラリネットの響きで始まる第2楽章では、一変してゆったりとした穏やかな世界に酔いしれる。第3楽章は風の中を淑やかに舞うように始まり、幽玄的な世界を描き出す。ブラームスの詩魂を体現したような演奏だ。柔軟性と優美な質感を兼ね備えたオーケストラの響きを堪能できる。
第4楽章では、強奏でも音が濁ることなく、品位を保ったまま、毅然とした雰囲気で旋律を歌い上げる。昨夏のレオノーレ序曲で見せたあの気迫を彷彿とさせるヴェルザー=メストの勇姿、第1ヴァイオリン奏者の真剣な眼差し、その瞬間を捉えたブライアン・ラージ氏の演出が秀逸だった。



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コメント 2

T.D

交響曲第3番と言えば、より一層ブラームス的な悲哀の雰囲気が強い印象があるのですが、ヴェルザー=メストの手にかかると、歌心たっぷりの色彩豊かな曲になりますね。チェロの悲痛な旋律に胸が締め付けられます。映像でも首席の方(?)が感情を込めて演奏されているのが印象的でした。ハードスケジュールの中、ここまで熱い演奏を聴かせてくれるヴェルザー=メストとクリーヴランド管弦楽団に感謝です。
by T.D (2016-03-12 09:49) 

menagerie_26

T.Dさん

ここまで劇的な解釈の第3番は、はじめて聴いたような気がします。特典インタビューで話していたとおり、透明感を保ちつつロマンティックなサウンドに仕上げていますね。ヴェルザー=メストの旋律を豊かに歌わせる音楽作りに、オケがよく反応していたと思います。マエストロのお気に入りの首席チェロ奏者さん、情熱的でしたね!

by menagerie_26 (2016-03-13 08:07) 

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