SSブログ

メンデルスゾーン 交響曲第3番 スコットランド [音楽]

黄金山からの眺め


Symphony No. 3 in A minor, Op. 56
Franz Welser-Möst
London Philharmonic Orchestra

11月。朝晩の冷え込みが厳しい季節になりました。秋の黄昏時は短くて、あっという間に日が暮れてしまいます。晩秋の冷たい風に吹かれながら、グラーデーションのかかった空を眺めるのは、至福の時間です。

交響曲第3番は、メンデルスゾーンが20歳の時、スコットランドを訪問し、楽想を得たと言われています。荒涼としたホリールード城は、若い音楽家のイマジネーションを刺激したにちがいありません。

メンデルスゾーンは、ヴェルザー=メストの主要レパートリーです。今シーズンは真夏の夜の夢の全曲版や、交響曲第4番を取り上げます。若い頃から3番はよく演奏していたようですね。うねるような弦の波が押し寄せ、深みのある濃厚な響きで包み込んでくれる2011年のセヴェランスホールの演奏と並んで、30代前半に録音した瑞々しいスコットランドも格別です。


哀調の滲む弦の調べで始まる第1楽章。荒涼としたスコットランドの風景が眼前に浮かんでくるかのようです。序奏を受けて、絹糸のようになめらかな旋律が始まります。ヴェルザー=メストは、硝子細工でもあつかうような細心さで、仄暗い抒情を見事なまでに表現します。この録音で最もお気に入りの個所です。繊細で陰影感のある響きが何とも言えないほど素晴らしく、抑えた情熱が徐々に高まってゆくような過程が出色なのです。独特のメランコリックな趣はオーストリア人気質でしょうか。ロンドンフィルの音色は、癖がないので、指揮者色に染まりやすい気がします。ヴェルザー=メストの思い描く世界を、それぞれの楽器が力まずになめらかに歌い上げるのです。


第2楽章。クラリネットの朗らかな響きに思わず心が踊り、気分はほんのりと緋褪色に染まってゆきます。濁りのない澄み切ったロンドンフィルの合奏が素晴らしいですね。第3楽章。深い孤独の中にいる人間に、そっと手を差し伸べてくれるかのような滋味溢れる旋律が魅力的です。ヴェルザー=メストの細やかな音楽の運び方が際立っています。第4楽章。最終の流麗なコーダを聴き終わったあとの清涼感がいつまでも心に残ります。


毎年この時期には必ず聴いている名曲。比較的容易に入手できます。ヴェルザー=メストのメンデルスゾーンに興味を持たれた方は、今ちょうど交響曲第5番がオンデマンドで聴けますので是非どうぞ。この音源は私も初めてです。

昔の名盤を聴くたびに、ああ、もっと EMIでCDを出して欲しかった…と思います。録音したネットラジオや映像ももちろん貴重だけれど、やっぱりCDがいいな。



Schumann/Mendelssohn: Sym

Schumann/Mendelssohn: Sym

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMI Classics
  • 発売日: 2008/02/18
  • メディア: CD




メンデルスゾーン:交響曲第3番&第4番

メンデルスゾーン:交響曲第3番&第4番

  • アーティスト: ウェルザー=メスト(フランツ),メンデルスゾーン,ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2005/07/21
  • メディア: CD




nice!(2)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。