SSブログ

ブラームスフェスティバル その1 [音楽]

2014brahms.jpg


Academic Festival Overture, Opus 80
Violin Concerto in D major, Opus 77
Symphony No. 4 in E minor, Opus 98

Julia Fischer, violin
Franz Welser-Möst, conductor
The Cleveland Orchestra


クリーヴランド管弦楽団と音楽監督ヴェルザー=メストさんの次のDVDレコーディングはブラームスです。ブルックナーシリーズが完結後、いつ始まるのか今か今かと待ちわびていたのですが、ようやく始動しました。今シーズンは大学祝典序曲、ヴァイオリン協奏曲、交響曲第4番を録音します。先月収録されたそのコンサート、現在オンデマンドで視聴可能です。


1月の定期演奏会を録音して何度も聴いているのですが、オンデマンドになったのでまたまた聴いております。
ブラームスの4番、最初聴いたときは、なんて速い演奏なのかしら・・・と唖然となりました。おそらく前任者のドホナーニさんの解釈に慣れきっていたからでしょう。ドホナーニさん、スッキリ系の演奏ではあるものの骨格がしっかりとしています。メロディを美しく演奏するよりは曲の構成を重視しているとでも言いましょうか。メストさんの手にかかると、それはそれは美しいブラームスに変身しているのであります。どこを切り取ってもああ、これはメストさんのやり方だな、と。いつものことながらティンパニーのYancichさんの音色、カッコイイです。惚れ惚れします。力強くもお上品で美しい!!


The Plain Dealer紙のインタビューによると、メストさん、ブロムシュテットさんの演奏がお好きなようですね。個性的な解釈を加えるのではなく音楽そのものに歌わせる演奏を目指していると。昨年末、N響でブラームスチクルスをなさったブロムシュテットさん、3番の静かに終わる部分が好きと述べていましたが、メストさんも同じなのですね。


明るい大学祝典序曲でスタートしたコンサート。不安定な個所はもちろんなし。この曲を聴くと自然と気分が高揚します。

2曲目、ヴァイオリン協奏曲のソリストはユリア・フィッシャーさん。正直申し上げますと、収録が入らなかった翌日の演奏の方がはるかに良かったです。オケ共々白熱の演奏をきかせてくれました。このオンデマンドの演奏は、丁寧で安定しているのですが、物足りない感じがします。今回のブラームスフェスティバルは4日間連続で開催され、最初の2日間が収録されました。これは2日目の演奏なのですが、初日にどうやら大きなミスがあったようでして、指揮者もオケもソリストも終始安全運転に徹したのかもしれません。


メインは交響曲第4番。
指揮者の金聖響さんが著書の中で、以前聴いてぴんとこなかった曲が理解できるようになるのは聞き手の成長もあるけれども、最初に聴いた演奏がつまらなかったのですよ、と書いておられます。私のような初心者素人には当てはまらないのは承知の上ですが、ブラームスの4番、実はこれまであまりぴんとこなかったのすね。ドホナーニさんの演奏を聴いて漸くもやもやとした中に光が射し始め、今回の演奏で見事に克服できたのであります。


何となく聞き手を不安にさせる冒頭のメロディ。音楽的には三度下降の音程進行という形式(シーソ、ミード・・・♪)によって、厭世的な音調を作り出しているのだそうです。暗いイメージではあるんですけど、メストさんとクリーヴランド管の演奏はどこか高貴な雰囲気が漂っています。三度下降をゆーったりと演奏されると苦手なんですね。メストさんはきびきびとしたテンポで処理、音楽の流れを滞らせません。引き締まった演奏でありながらメロディラインを非常に美しく歌わせるので、淡白ではなく表情が豊かな印象を受けます。だらっとなったりテンポが落ちる個所がないため、あっという間に第1楽章が終わります。

変わって第2楽章はゆったりと首席奏者に歌わせ、優雅な印象です。明るい第3楽章の後、いよいよパッサカリアという形式を用いた第4楽章。同じくテンポは速めで一気に駆け抜けるのですが、アンサンブルは非常にかっちりとまとまっています。皆さんいつもながらよくついてくるなあ〜この速さに。オケと指揮者との間に、阿吽の呼吸とも言うべき信頼関係を感じます。フルート首席奏者のジョシュア・スミスさんは今回バッハのアルバムで使用した古いフルートで演奏されたそうです。最終楽章、息をのむほどうつくしいソロを聴かせてくれました。


秋のDVDリリースが待ちきれません!!!(というか、予定通りリリースがありますように。なむなむ^^)

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番 [音楽]

martin-helmchenrjpg.jpg


特に好きでも嫌いでもなかったベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。お気に入りのピアニストの演奏を聴いても魅了されることがなく、いつも荒々しく激しい印象にとどまるのみ。先日のヘルムヒェンの演奏を聴かなければ、生涯素通りし続けたかもしれない。


これほどまでに格調高い演奏は初めて。
これほどまでに陰影に富んだ解釈は初めて。
これほどまでにピアノのタッチが心の琴線に触れるのは初めて。


とまあ、私にとっては初めてづくしなのである。


ヘルムヒェンは表向き声高に叫んではいない。抑制のきいたタッチであるのに、内部からじわじわと熾烈さが顔を出す。燕尾服に身を纏った孤高のベートーヴェンの姿が浮かんでくるのだ。高貴なベートーヴェン。いつもと同じ音符が聴こえているはずなのに、立ち止まってしまう。立ち止まってじっくりと耳を傾けずにはいられない。一音一音に込められた深い情感が何とも言えず素晴らしく陶然となる。さらりと演奏しながらニュアンスに富んだピアノのタッチ。まあ、お上品すぎるという人もいるでしょうが、要所要所で心を鷲掴みにされてしまった。ライヴ演奏に接してしばらく他の音楽を聴きたくなくなるのと同じ気分なのだ。心の奥がいまだに震えている。


リハーサルの様子


伴奏はパリ管とドホナーニ。
私は派手な伴奏ばかり聴いていたのだと実感した。端正で詩情溢れるヘルムヒェンのピアノと、わざとらしさがなくかっちりとしたドホナーニの伴奏の相性は抜群だ。

演奏を聴いて一目惚れならぬ一聴惚れをすることはほとんどないのだが、今回は瞬く間にマルティンのピアノの虜になってしまった。チャールズ・ローゼン氏の『ピアノ・ノート』の一節が思い浮かぶ。
「ピアノで作品を弾くとき、美しい音色の質はメロディの輪郭の描き方と、和声や対位法の組み立て方で決まる。これが正しくできれば―-―和音が共振し、メロディの統一がとれて輪郭がくっきりしていれば―-―美しい響きが得られる」


同世代の演奏家として聴き続けていこうと思う。楽しみがまた増えた。


Martin Helmchen, Piano
Orchestre de Paris
Christoph von Dohnányi, Direction

2/14までオンデマンドで聴けます。

Amour [洋画]

tharaud-bof-amour-haneke.jpg



愛、アムール(2012年 仏、ミヒャエル・ハネケ監督)

出演
ジャン=ルイ・トランティニャン - ジョルジュ
エマニュエル・リヴァ - アンヌ
イザベル・ユペール - エヴァ
アレクサンドル・タロー - アレクサンドル


ピアニストのアレクサンドル・タローさんが出演しているらしいから見てみようかなと気軽に借りてきたこの作品。予想以上に重い内容だった。

パリの高級住宅街で暮らす元音楽教師のジョルジュとアンヌ。二人そろってアンヌの教え子、タロー(タローさんは本人役!)の演奏会に出かけるなど悠々自適の生活を送っていたが、ある日突然アンヌが病に倒れ右半分(左?)が不随となる。アンヌが自宅での生活を強く望んでいることもありジョルジュは介護を始めた。
最初は手足が自由に動かないだけであったが、日に日に思考することも発話することも難しくなっていくアンヌ。ジョルジュは献身的に介護するものの限界は目に見えていた。下の世話に食事の世話。たとえ看護師の援助があったとしても80代のジョルジュがこなせる量ではなかった。次第に手をあげることも増え、ついには冒頭の結末に至る。

老老介護がテーマではあるものの社会性の強い映画という印象はない。老夫婦の日常が静かに淡々と映し出される。アパルトメントのシーンが大半なので中盤でやや中だるみした感はあるが、追いつめられていくジョルジュの姿が丁寧に描かれていた。献身的に妻の世話ができるのは、確かに愛があればこその行為なのだが、何か自己満足的な匂いすら漂う。娘や看護師の助言に耳を傾けないジョルジュが頑固者に見えることさえあった。愛の呪縛とでも言うのだろうか。


タローさんの余分な物を排した実直な演奏はこの映画にぴたりとはまっていた。挿入曲はシューベルトの即興曲やベートーヴェンのバガテルなど。あまりにも素晴らしかったので即、サントラを買ってしまったほど。タローさんにはぜひシューベルトを録音してほしいな。


居間の書斎にあるCDはイエローレーベルが圧倒的に多かったです^^;

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。