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鮮やかな色彩感 [音楽]

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歌劇『リエンツィ』~序曲
楽劇『トリスタンとイゾルデ』~「前奏曲と愛の死」
楽劇『ローエングリン』~第3幕前奏曲
楽劇『ローエングリン』~第1幕前奏曲
歌曲集『ヴェーゼンドンクの5つの詩』
楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』~第1幕前奏曲
楽劇『ワルキューレ』~「ワルキューレの騎行」

 ミーシャ・ブルガーゴーズマン(ソプラノ:ヴェーゼンドンク歌曲集)
 クリーヴランド管弦楽団
 フランツ・ヴェルザー=メスト


星の数ほど存在するといっても過言ではないオーケストラと指揮者の中から、クリーヴランド管弦楽団とヴェルザー=メストのコンビに魅了され続ける理由はどこにあるのだろうとふと考えてみました。頻繁に演奏を聴いています。公式録音が非常に少ないので、せっせと録りためたネットラジオやDVDが中心となるのが玉に瑕ではありますが。


楽団の伝統と言えばご存知、

透明度の高い響き
優れた合奏能力


これらにヴェルザー=メストが目指すところの「旋律をより豊かに歌わせる感覚」
が加わり結果として、

時に雄弁で時に抑制されたこの上なく美しい響き
弛緩することのない常に呼吸する音楽

が実現しているんじゃないかと分析してみました。


ワーグナーのオペラの序曲とヴェーゼンドンク歌曲集を収録した本アルバムは、オケと指揮者が紡ぎ出す上質の響きを余すことなく堪能できる妙なる一枚でございます。もう何度聴いたかわかりません。ミーハー丸出しで申し上げますと、国内版と海外版の両方を所持しております。ライナーノーツが違うんですからファンとしては買わない訳にはいかんのです。


冒頭のリエンツィは透明感溢れる響き中心としていますが、随所で聞こえる美しく歌う弦が何とも魅力的。たっぷり歌いながらも重量級の演奏にならないってどんな指示を出しているんでしょうか、マエストロは。

いかなる場面でもしなやかなアプローチを堅持するヴェルザー=メストの棒裁き。前奏曲と愛の死はさくさく進んでいくのですが、軽快な音色をベースとしつつも上質のシルクに包まれた陶酔感があります。


颯爽としたローエングリンの第3幕前奏曲。オーボエのまろやかなソロが実に良いです。ヴェルザー=メストがオケの面々にレクチャーで情景説明をした上で演奏に臨んだローエングリンの第1幕前奏曲。幻想的な雰囲気が漂いますねえ。ヴェーゼンドンクの5つの詩ではブルガーゴーズマンの伸びやかな美声が官能的世界へといざない、陶然となります。あああ〜なんと美しい世界なのでしょうか。かなり速めのテンポで進行し、どこまでも飛翔したくなるような印象を受けるマイスタージンガー前奏曲。凛とした響きのワルキューレの騎行で幕を閉じます。


鮮やかな色彩感の漂うノーブルな音色に酔いしれるアルバムです。

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"Perfectly charming" シューマン 森の情景 作品82 [音楽]

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ここのところ毎日のようにヘルムヒェンの弾く森の情景を聴いている。正確に言うと森の情景と交響的練習曲とアラベスクが収録されたアルバムをリピート中。
シューマンのピアノ曲はあまり知らないしこれまで聴くことは少なかったのだが、最近取り憑かれたように聴いている。


森の情景はオスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』にも登場する。

"As they entered, they saw Dorian Gray. He was seated at the piano, with his back to them, turning over the pages of a volume of Schumann's Forest Scenes. 'You must lend me these, Basil' he cried. ' I want to learn them. They are perfectly charming.'"
(本CDライナーノーツより引用)

オスカー・ワイルドをして「すばらしくうっとりさせる曲」と言わしめた森の情景は1849年末から翌年にかけて作曲された9曲からなる小品集。作品番号から分かるように中期の作品だ。


1. 森の入り口
2. 獲物を狙う狩人
3. 孤独な花
4. 不気味な場所
5. 親しみのある風景
6. 宿
7. 予言の鳥
8. 狩りの歌
9. 別れ


体調が思わしくなかったシューマンが小康状態にあるときに作曲されたということで、
躁鬱を繰り返すシューマンの心情を体現させようとするピアニストもいる。情感たっぷりの重厚すぎる不気味な雰囲気が漂う演奏を聴いたときは好きになれなかった曲。



ヘルムヒェンは楽譜の外にある事物に影響されることなく抑制された穏やかなタッチで曲を進めてゆく。実に明晰で楚々とした佇まいの演奏だ。とりわけ彼の和声感が秀逸。和声感がしっかりしているので、派手なことをしなくても素晴らしい演奏になるのではないかと最近よく思う。アーティキュレーションやテンポも実に自然だ。(和声感について言葉にするのは難しいのですが・・・)


特に好きなのはフリードリヒ・ヘッベルの詩が添えられた4曲目の不気味な場所と5曲目の親しみのある風景。

高く育った花もここでは死の青白さ
中央の一本だけ暗い赤色
太陽からではなく太陽の光を受けず
大地から人の血を吸った

(出典不明のため、藤本一子著 『シューマン』より引用)

不気味な内容の詩が付与されているにもかかわらず夜暗い部屋でヘルムヒェンの演奏を聴くと、
魂が共鳴する。5番目の親しみのある風景に入るとピンと張りつめていた心がほぐれて和らいでゆく。



ドイツの深い森・・・を訪れるのは当分難しいので、
次は近くの森の中で聴いてみようかな。


ここで試聴できます。
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