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ブラームス ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 [音楽]

陸橋からの眺め.JPG

(Nikon 1 J5 のベストモーメントキャプチャーモードで撮影した陸橋からの眺め。私の中のダブルコンチェルトのイメージにぴったり。)

Brahms Double Concerto in A minor, Op. 102
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst, conductor
William Preucil, violin
Mark Kosower, cello
January 2016, Miami Night Concert Hall


ブラームスの2つのピアノ協奏曲と今回の二重協奏曲は、傑作ではあるのだけれど、自分の中で生き生きと存在感を放つまでには、随分時間がかかった気がする。去年のマイアミレジデンシーの演奏会は、ライヴ放送後、繰り返しオンデマンドになっていたのだけれど、とことんハマるということはなかった。個人的にブラームスの音楽は、交響曲とヴァイオリン協奏曲を除けば、後からじわじわとその良さに気づくことが多い。ピアノの小品、ピアノソナタ、チェロソナタ、クラリネットソナタ...挙げればきりがないほど今年はブラームスばかり聴いている。読書が捗るのもブラームスなのだ。

ブラームスは交響曲第4番を作曲後、疎遠になっていたヨアヒムとの関係修復を願ってダブルコンチェルトを作曲したと伝えられる。第4交響曲で見せた、厭世観や諦念といったものは影を潜め、ブラームスらしい陰りのある美しさと秘められた激しい情熱を感じさせる。独奏楽器とオケが複雑に絡みあい、次第に高揚感を増していく過程は出色だ。

第1楽章。オーケストラがほんの少しだけ第1主題を奏でた後、独奏チェロの寂寞とした音色が聴こえてくる。ソロを弾くのは、オーケストラの首席奏者 マーク・コソワーさんだ。深海の底から静かに響き渡るかのような清らかで深い音色で、聴き手を魅了する。コンサートマスターのプレイシルさんのヴァイオリンは、やや抑えめなのだけれど、芳醇で美しい。チェロとヴァイオリンの激しい演奏の後、トゥッティで華麗な第1主題が奏でられる。ここは前半で最も好きな個所。ヴェルザー=メストとクリーヴランドオーケストラの伴奏は、狂おしいほど情熱的だ。続く第2主題での、ヴァイオリンセクションの目眩がするほど艶やかで美しい響きといったら、もう卒倒しそうになるほどである。

第2楽章は、どことなく懐かしさのある虹色の輝きをみせる。今の季節なら、冬の青空に映える蝋梅の花でもいいかもしれない。「これで良かったのだ。悔いはない。」とブラームスが、自身に言い聞かせているかのようなイメージが浮かぶ。コソワーさんのあたたかい音色に、管楽器が応え、独奏ヴァイオリンへと繋いでゆく。

第3楽章は軽快なチェロの調べで始まり、同じ旋律をヴァイオリンが受け、次第に熱気を帯びてくる。独奏楽器の短いカデンツァは、張り裂けそうな想いを秘めながら、ほろ苦く切ない。コソワーさんとプレイシルさんの、力みのない練達のソロに思わずハッとさせられた。終楽章でのトゥッティの音の豊かさ、力強さ、強靭さは、クリーヴランドオーケストラの魅力を存分に味わえるものだった。


(コンサートの様子がこちらにあります。)

というわけで、来週はいよいよ6年ぶりのブルックナー7番だ。RCOデビューも7番だったけれど、クリーヴランドで取り上げるのは2011年以来となる。
中継があるので是非どうぞ。1/29(日)午前10時から。




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