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ピアノマニア [洋画]

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2009年 オーストリア/ドイツ (ドキュメンタリー)
監督: リリアン・フランク, ロベルト・シビス
出演: シュテファン・クニュップファー, ピエール=ロラン・エマール, ラン・ラン, アルフレート・ブレンデル, ジュリアス・ドレイク, イアン・ボストリッジ他

*内容に触れているので未見の方はご注意ください。



「ピアニストがそれぞれの曲に対して思い描く音色はいつも同じだ。
しかし演奏場所や使用するピアノ、湿度や温度などで変わってしまう。
その場所でできあがる音を、ピアニストがイメージする音に合うよう絶えず調整しないといけない。これがとても難しいんだ。」(→たぶんこういう内容だったか)

調律師シュテファンの言葉です。
このレベルならなるほどと頷けるのですが、映画に登場するピアニストたちの要求はとどまるところを知りません。ランラン然り。ブレンデル然り。ドレイクもまた然り。そして真打はエマール。

エマールとシュテファンはバッハのレコ―ディングの準備を1年前から始めます。
「バッハが意図したことを聴き手に伝えたい」とエマールは考えるので、音に対する要求は桁外れです。オルガンのような音、チェンバロのような音、クラヴィコードのような音、室内楽のような響き...

これに対し、シュテファンはできることは全部やろうという姿勢なんですね。
ある時はホーフブルク王宮へ行ってチェンバロとクラヴィコードの音色を確かめ、またある時はリュートの音色を出すために響版にフェルトを挟んでもみます(残念ながらこれはエマールが却下)。録音用にはピアノNo.245を使う予定ですが、万一に備えて別のピアノも準備(No.780)。ハンマーヘッドも新調します。

そしてレコ―ディング前日。
「あれ、音が広がりすぎるなぁ。前回よりも。」と音に納得できないエマール。
え?まだ不満があるの~この期に及んでそれはないでしょう!!と、つっこみたくなりました。
ここで予備のNo.780が登場です。両方並べて聴き比べるのですが、エマールは最終的にNo.245を選びます。やれやれ。


シュテファンにとって、
「シュテファン!!!この音を待ってたんだよ」
とピアニストが口にする瞬間は何物にも代えがたいのだとか。だから続けられるのかな。
それまでの苦労が報われるとはいえ、並みの精神力ではやっていけない仕事です。(カメラが捉えた場面はほんのわずかですから、実際はもっと厳しい現場だったんじゃないでしょうか。)

さてその「フーガの技法」ですが、
なるほど、本当にチェンバロみたいに、オルガンみたいに聴こえます(爆)。チェンバロは特に分かりやすいです。先入観があるかも?さあ、どうでしょうか。未聴の方は是非聴いてくださいませ。

ベルリンプレミア(2010年)の一コマ。
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ナイスコンビ♪


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メンデルスゾーン チェロソナタ [音楽]


Mendelssohn:Oeuvres Pour Cello

Mendelssohn:Oeuvres Pour Cello

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Lyrinx
  • メディア: CD


チェロとピアノのための協奏的変奏曲 ニ長調 Op.17
チェロ・ソナタ 第1番 変ロ長調 Op.45
チェロとピアノのための無言歌 ニ長調
チェロ・ソナタ 第2番 ニ長調 Op.58

チェロ: ヴァレリー・エマール
ピアノ: ピエール=ロラン・エマール


『考える人』(2009年 春号)のエマールさんのインタビュー記事で、「もうひとりの妹、ヴァレリーは音楽家になってチェロを弾いています。彼女とはメンデルスゾーンの作品をいっしょに録音もしています」という内容を見て興味を持ったアルバムです。好きなアーティストであっても共感できない演奏もあるのですが、これは大当たり!。室内楽曲というのも良いです。メンデルスゾーンは交響曲ばかり聴いていたので新鮮味がありますね。


真冬よりも秋の夜長に似合う曲でしょうか。付属のライナーノーツには「これらの楽曲は抒情性に満ち溢れていて、ブラームスの作品につながるものがある。とりわけチェロ・ソナタ第2番は。」と解説があります。そういえば何となくブラームスのソナタにも似ているなぁ。


この録音、ピアノの存在感が大きいです。奇をてらった弾き方であったり、チェロの演奏を遮るようなことはもちろんありません。おそらくオーソドックスな演奏です。でもときどきはっとする瞬間があるんです。フレージングが冴えている演奏、ってこういう弾き方なんだろうなと(素人の私は)解釈しています。時にチェロをリードし、そのリードに負けじとチェロが応える様子が際立って素晴らしいです。ヴァレリーさんのチェロをもっと聴いてみたくなったので、コダーイの無伴奏チェロソナタのCDを早速注文しました。


今日のCDは日本のアマゾンでは廃盤扱いですが、イギリス、フランス、ドイツのアマゾンでは入手可能です(本CDおよびジャケットの違う再販版)。

ジャケットの写真→そっくり!?
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ラヴェル ピアノ協奏曲 ト長調 [音楽]

今月はラヴェルのピアノ協奏曲ト長調を実演で聴く予定です。その日を指折り数えて待ちながら、エマールさんとツィメルマンさんのCDを交互に聴いています。両者とも伴奏はブーレーズさんとクリーヴランド管弦楽団。

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2010年 セヴェランスホールでの定期公演から


ラヴェル ピアノ協奏曲 ト長調

ピアノ: ピエール=ロラン・エマール
指揮: ピエール・ブーレーズ
管弦楽: クリーヴランド管弦楽団


何て柔らかくて上品で音が粒だって聞こえるラヴェルでしょうか。こういうスタイルは初めてです。
華やかではじけた演奏ではなく、ある程度の節度を保ちながら颯爽と進んでいくピアノとオケの音色。ブーレーズさんの指揮のもと、クリーヴランド管とエマールさんが一体となった妙なる調べ。いつまでも聴いていたくなります。指揮者、ソリスト、オーケストラの間に信頼関係があってこそ実現する演奏です。(ブーレーズさん:1965年~、エマールさん:1996年~クリ管定期にしばしば登場。)

BBC Music Magazineの記事によると、エマールさんは特に第2楽章に注意を払っているようです。キーワードは"Ravel distance"

'If the piece starts to become sentimental, then it can be terribly kitsch. I think you should always keep a certain distance - what I call the Ravel distance. He was so shy and protective of himself, very much reserved. The second movement is classical: touching but not sentimental.'
感傷的な演奏にならないように常に距離を取ることを心がけていたんですね。

さらにエマールさんの第3楽章の処理については、

The Concerto's third movement possesses pitfalls, too. 'It can be a marmalade in sound if taken at full speed,' says Boulez. 'But Pierre-Laurent did it more precisely. It sounds quicker because it is fully articulated.'
「すごい勢いで演奏すると音がぐちゃぐちゃになる恐れがあるが、エマールは(他の人よりもよりいっそう)正確に弾いた。速めの演奏に聞こえるのはアーティキュレーションがしっかりしているから」とブーレーズさん。へえ、、細部にまで抜かりないですね。


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ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲 [音楽]

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ピアノ: ピエール=ロラン・エマール
指揮: ピエール・ブーレーズ
管弦楽: クリーヴランド管弦楽団

エマールさんのDG第3弾かつクリーヴランド管にとってもDG第3弾となるアルバムは、ラヴェルの協奏曲2曲と鏡を収録。協奏曲はライヴ、鏡はセッション録音とのこと。クリーヴランド管では2010年の2月は3週連続の収録になったようですね。ラヴェル→マーラーの10番/子供の不思議な角笛→ワーグナーの序曲集&歌曲と。どれも繰り返し聴いているお気に入りのアルバムです。


本日の「左手のためのピアノ協奏曲」

迫力あるオーケストレーションと2か所のカデンツァ、中間部の軍隊の行進のようなメロディが大好きな曲です。ツィメルマンさんの演奏(ブーレーズさん指揮、ロンドン交響楽団)と比べると、
エマールさんの方はコントラストがはっきりしているなぁという印象を受けました。ダークな部分を強調しているという感じ。

エマールさんによれば、
「ト長調協奏曲はオーケストラと一体になって演奏するが、左手の方はソリストの比重が大きくなる。」のだそうです。
「左手のみで弾いて両手で弾いているように聞こえなければならない」のだとか。

求められるピアノの音色も異なるので(ト長調→ピアノは歌うように、左手→強力なサウンドが必要)、なんと別々のピアノで録音したそうです。1つの演奏会で2曲同時に取り上げたわけですが、1曲ずつピアノを替えたらしいのです。わぁ、これってまさに映画「ピアノマニア」の世界ですね。(BBC Music Magazine 2010年11月号の特集より→こちらで全文閲覧できます。写真を担当したクリーヴランド在住のRoger Mastroianni氏のページです。)

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