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ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番 [音楽]

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特に好きでも嫌いでもなかったベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。お気に入りのピアニストの演奏を聴いても魅了されることがなく、いつも荒々しく激しい印象にとどまるのみ。先日のヘルムヒェンの演奏を聴かなければ、生涯素通りし続けたかもしれない。


これほどまでに格調高い演奏は初めて。
これほどまでに陰影に富んだ解釈は初めて。
これほどまでにピアノのタッチが心の琴線に触れるのは初めて。


とまあ、私にとっては初めてづくしなのである。


ヘルムヒェンは表向き声高に叫んではいない。抑制のきいたタッチであるのに、内部からじわじわと熾烈さが顔を出す。燕尾服に身を纏った孤高のベートーヴェンの姿が浮かんでくるのだ。高貴なベートーヴェン。いつもと同じ音符が聴こえているはずなのに、立ち止まってしまう。立ち止まってじっくりと耳を傾けずにはいられない。一音一音に込められた深い情感が何とも言えず素晴らしく陶然となる。さらりと演奏しながらニュアンスに富んだピアノのタッチ。まあ、お上品すぎるという人もいるでしょうが、要所要所で心を鷲掴みにされてしまった。ライヴ演奏に接してしばらく他の音楽を聴きたくなくなるのと同じ気分なのだ。心の奥がいまだに震えている。


リハーサルの様子


伴奏はパリ管とドホナーニ。
私は派手な伴奏ばかり聴いていたのだと実感した。端正で詩情溢れるヘルムヒェンのピアノと、わざとらしさがなくかっちりとしたドホナーニの伴奏の相性は抜群だ。

演奏を聴いて一目惚れならぬ一聴惚れをすることはほとんどないのだが、今回は瞬く間にマルティンのピアノの虜になってしまった。チャールズ・ローゼン氏の『ピアノ・ノート』の一節が思い浮かぶ。
「ピアノで作品を弾くとき、美しい音色の質はメロディの輪郭の描き方と、和声や対位法の組み立て方で決まる。これが正しくできれば―-―和音が共振し、メロディの統一がとれて輪郭がくっきりしていれば―-―美しい響きが得られる」


同世代の演奏家として聴き続けていこうと思う。楽しみがまた増えた。


Martin Helmchen, Piano
Orchestre de Paris
Christoph von Dohnányi, Direction

2/14までオンデマンドで聴けます。

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