ドヴォルザーク ピアノ協奏曲 [音楽]
ドヴォルザーク ピアノ協奏曲 作品33
ピアノ独奏 マルティン・ヘルムヒェン
管弦楽 ストラースブール・フィルハーモニー管弦楽団
指揮 マルク・アルブレヒト
ドヴォルザークといえば交響曲とルサルカ。協奏曲や室内楽についてはあまり馴染みがなくCD棚の奥で眠っている。
以前聞いたときは全く印象に残らず忘れかけていたピアノ協奏曲なのだが、ふと手に取ってみるとものの見事に魅了されてしまった。単なる音だったものが突如語りかけてくる。苦手な曲でも時間を置いて向き合えば必ず分かるときが来るものだなと久々に感じた。
本作品、若きドヴォルザークの才能が遺憾なく発揮された佳作だ。同時期に作曲された交響曲5番を彷彿とさせるし、第2楽章はこれぞドヴォルザークと言わんばかりの美しい艶やかなメロディーに溢れている。しかしながら独奏ピアノはオーケストラの一員として、傍らで弾いているような印象を受ける。ピアノとオケが対峙する場面はほとんど見られないのである。
ヘルムヒェンによるとこの曲は、
It’s extremely original and unconventional, unlike any other Romantic piano concerto. It’s very symphonic, less pianistic, and not openly virtuosic… though horribly difficult to play! The 2nd movement is a unique nature painting, full of the most beautiful Slavonic spirit and expression. (出典)
(他のロマン派のピアノ協奏曲とは違って非常に独創的でこれまでにないものです。とてもシンフォニックでピアノらしい響きは控えめで、表立ってはヴィルトゥオーゾ的ではないんですが、演奏するのは恐ろしく難しいんですよ!第2楽章は独特の自然描写、美しいスラブ的精神と表現に満ちています。)
ライナーノーツによると、名曲であるにもかかわらず演奏の機会が少ない理由としてブラームスとの類似点およびスコアが難しすぎる点が挙げらている。初期から中期にかけて、ドヴォルザークの作風はブラームスとあまりに似通っていると指摘されていた。ブラームスのピアノ協奏曲と比較すればそんなことはないのはすぐ分かるはずなのだが。
またオリジナルのスコアは演奏不可能とされていたそうで、ピアニストのヴィレーム・クルツが作曲家の許可を得て改訂を施した版が現在は広く演奏されているとのこと。ヘルムヒェン自身もドヴォルザークのオリジナルスコアに忠実に演奏することを試みつつも、いくつかの場所ではクルツ版を採用したそうだ。
ヘルムヒェンはゆったりとしたテンポで繊細で内省的な解釈を全面に見せつつも、響きはどこまでも明晰でこの上なく美しい。弱音がとりわけ美しいのだが、フォルテで強打したときであっても気品がある。アルブレヒト指揮のストラースブール・フィルハーモニー管弦楽団の伴奏もピアニストと解け合いアンサンブルの密度も非常に高い。
特に気に入っているのはロンド形式の第3楽章。何となくシベリウスのヴァイオリン協奏曲の第3楽章にも似た軽快なメロディーが展開される。キレのあるタッチで颯爽と駆け抜けてゆく独奏ピアノが実に秀逸。
パリ管で演奏したときのインタビューを。(ドイツ語で喋ってフランス語字幕・・・)
今冬のドヴォルザーク祭りでニューヨークフィル定期演奏会デビュー。ドホナーニ指揮でこの曲を演奏予定。
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