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アスリートのようなストイックさ - Johannes Brahms Cycle No. 2 - [Johannes Brahms Cycle]

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Johannes Brahms
Violin Concerto in D major, Opus 77
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst
Julia Fischer, violin
January 2014, Severance Hall


ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、長らく苦手な曲の代表格だった。長大な第1楽章を、スローテンポで情感たっぷりに演奏されると、もーお腹いっぱい・・・すみません、となって脱落してしまうのだ。そんな私の苦手意識を完全に拭い去ってくれたのが、これまたクリーヴランドオーケストのとある演奏会だった。忘れもしない2012年5月のカーネギーホール公演。幸運なことにライヴ放送があったので、インターネットの前でスタンバイしていた。もともとはブロンフマンがピアノ協奏曲第2番を弾く予定だったが、急遽キャンセルし、ギル・シャハムのヴァイオリン協奏曲に演目が変更された。なんとなく聞き始めたところ、今までに聞いたことのないようなブラームスにすっかり魅了され、以来、どんなタイプの演奏も聴けるようになったというわけだ。「ブラームスのVn協奏曲って、こんな曲なんですよ、みなさん聞いてみて」。本曲のエッセンスを余すところなく伝えるギル・シャハムに、心底感動したものだった。



第1楽章。冒頭の第1主題からクリーヴランドオーケストラの純度の高い演奏に惹きつけられる。清澄な響きとふんわりとした質感が程よくブレンドされ、実に心地良い。やや早めのテンポでのトゥッティが終わった後、颯爽とユリア・フィッシャーの独奏ヴァイオリンが入る。彼女はブラームスのコンチェルトに何らかのストーリーを見出すことはない、とインタビューで語っているとおり、実直に音楽と向き合う姿勢がうかがえる。艶やかさであるとか、気迫、情熱といったものよりも、アスリートのようなストイックさが前面に出ていると思う。だからといって淡々としているわけではない。瑞々しい音色と精緻な演奏は、オーケストラとヴェルザー=メストの音楽に実によく溶け合っているのだ。ノーブルな紺のドレスは彼女の楚々とした魅力を引き立てる。


第2楽章。ローズンワインさんの嫋やかなオーボエを堪能した後(この方のオーボエにはいつも陶酔してしまう)、フィッシャーのヴァイオリンがその旋律を引き継ぐ。節度を保った折り目正しい彼女の音色がこの上なく秀逸だ。
軽快な第3楽章。最後までストイックに駆け抜ける独奏ヴァイオリンを、ヴェルザー=メストの軽妙なタクトでオケ全体が手堅くサポートする。聴き終わった後の爽快感は本ディスクの白眉とも言えるだろう。今回のユリア・フィッシャーのヴァイオリン、知・情・意で考えると、情の部分がもう少しあれば、と感じることもあったけど、ライヴ録音でのこの完成度には感嘆するばかりだ。



(マエストロによると、ユリア・フィッシャーのIQは160以上だそうです。)



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コメント 2

T.D

ユリア・フィッシャーは、メンデルスゾーンの協奏曲でのパワフルかつ情熱的な演奏が印象にありました。しかし、今回の演奏では知的で落ち着いた雰囲気が前面に出ているように思えましたね。確かに、オケもそれを手堅くサポートするような印象を私も持ちました。

IQ160のお話は面白いですね。確かにその知性が演奏に現れていました。

by T.D (2016-02-20 23:25) 

menagerie_26

T.Dさん

安全運転になった印象も少しありましたが、手堅くまとめていたと思います。彼女のメンデルスゾーンは未聴なのでさっそく聴いてみます!

特典のインタビューで、「マエストロは物静か」と話していたのが印象に残っています。ヴェルザー=メストの人となりが分かるエピソードですね(^^)

by menagerie_26 (2016-02-21 07:57) 

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