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ブルックナー 交響曲第7番 [音楽]

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Bruckner Symphony No. 7
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst, conductor
January 2017, Miami Knight Concert Hall
オンデマンドは、来週月曜日まで。)

人は、光り輝くものに惹かれる。太陽でも月の光でもいい。輝いているものに魅了されるのだ。マイアミ演奏会のブルックナーは、燦々としたきらめきを放っていた。指揮者と奏者の揺るぎない自信。湧き上がるような熱気と高揚感に溢れ、非の打ち所がない演奏だ。

ヴェルザー=メストの7番は、これまでに4種類聴いている。ユースオケ、ロンドンフィル、クリーヴランドとのレコーディング3種、そして去年のコンセルトヘボウ管デビューの演奏会だ。今回のマイアミの7番は、巧みに情感を付けながら、エネルギーがほとばしるような熱い演奏だった。マイアミコンサートホールの恵まれた音響も、一役買っているだろう。WCLVの録音技術のおかげで、日本にいながらこんなに素晴らしい響きを堪能できるのだから、実にありがたい時代だ。

ヴェルザー=メストの音楽は、その美しさに焦点が集まる。もちろん、今回のブルックナーも極上の美を追求した演奏だ。ただ、今までとは違う。指揮者と奏者が、同じ地点へ向かって無心に進んでいく。音楽があるのみだ。彼は、クリーヴランドでの音楽づくりで重要視する点として、奏者の”self-confidence”を上げている。大勢で合奏する場合、各自が自信を持って奏でなければ、芯のある響きは生まれない。これは邦楽でも同じなのでよく分かるのだ。凜とした強さのある美しさほど、完璧なものはないだろう。特に弦セクションの優雅さと強靭さを兼ね備えた太い響きは、心に深く刻み込まれた。

冒頭の弦のトレモロの後、豊穣なチェロの響きで曲は始まる。アンサンブルが完璧なのはいうまでもない。ブルックナーの音符が、澄み切った空気の中で、凜として輝く花々のように感じられた。光の差すような神々しい雰囲気の第2楽章。さりげなく淡々と進むかのようでありながら、曲の持つ優美さ、繊細さが胸に響く。

第3楽章のスケルツォは、非常にテンポよく音楽が流れてゆく。繰り返しが続くので、演奏によっては退屈しそうな楽章だ。マイケル・ザックスさんの颯爽としたトランペットの音色が、高らかに鼓膜を突き抜ける。フィナーレの軽やかさは、このコンビならではの響きだろう。

大きくテンポをゆらしたり、特定の楽器を際立たせる場面は一切ない。どこまでも自然体でありながら、ブルックナー7番の魅力を余すところ無く伝える秀演だ。演奏から伝わってくる電流のようなまぶしい震えが、私の心の中にいつまでも残っている。


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