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行書のラヴェル [音楽]

先日BBCプロムスで、アレクサンドル・タローさんの弾くラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲を聴きました。ピアノもオーケストラもこの上なく素晴らしく、ネットラジオからでさえもその高揚感が伝わってきました。会場で聴いた人はさぞかし興奮したことでしょう。

その後YouTubeに動画がアップされていたので、早速視聴しました。
おや、譜面台に楽譜があるではないですか。





今読んでいるピアニスト 山崎孝氏の『名ピアニストたちとの出会い』によりますと、タローさんはジェルメーヌ・ムニエ門下とのこと。このムニエ氏というのは、「不確実な暗譜よりも徹底した完全性が望まれる」と著者に語ったことがあるそうです。タローさんの演奏というのは薫陶を受けたムニエ氏の教えに忠実なのだとか。タローさんが楽譜を譜面台に置いて演奏するのはあまり珍しいことではないそうですね。


左手のピアノ協奏曲は最近の録音ではエマール先生のCDがお気に入り。タッチが深く暗部を際立たせるようなピアノで、タローさんとは対極にある楷書体のきっちりとした演奏です。



一方、タローさんは行書です。堅実さと自由さを両立させた構成感が大変に見事で、流麗な鍵盤さばきが光ります。ラヴェルの協奏曲をフランスのピアニストが弾くと、必ずその人にしか出せないフレージングであったり、ピアノタッチがあるなあといつも思うのです。バヴゼさん然り、エマールさん然り、ティボーデさん然り。タローさんも例外ではありません。今回は中間部の行進曲風の個所のフレージングにはっとさせられました。


伴奏はファンホ・メナさん率いるBBCフィルハーモニック。この伴奏は上手いですね。メナさんという指揮者はよく目にする名前だったのですが、今回初めて聴きました。バランス感覚に優れた方です。ライヴとは思えないくらいよく纏まっているのですが、守りの体制を取るのではなくて、タローさんのピアノと同じく溌剌とした躍動感がありました。来シーズン、クリーヴランドにも客演するので楽しみです。


BBCのオンデマンドはこちらから。


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