SSブログ

12年間で培ったサウンド クリーヴランドオーケストラ プロムス演奏会 1 [音楽]

IMG_0216.JPG

(IMG Artistsから)


Prom 68
ブラームス 大学祝典序曲
ヴィトマン フルート協奏曲 Flûte en suite (UK初演)
ブラームス 交響曲第1番
*フルートソロ ジョシュア・スミス(クリーヴランドオーケストラ首席フルート奏者)


およそ10年ぶりにクリーヴランドオーケストラが夏のロイヤル・アルバート・ホールに戻ってきました。今夏の音楽祭で最も心待ちにしていた演奏会です。

プロムスを皮切りにヨーロッパツアーが始まるのですが、何とその2日前に突然のヴェルザー=メストさんのウィーン辞任劇。ひっくり返りそうになりましたねー。これからツアーなのにどうなるの?プロムスは?え?え?え?本当にどうなるの?と、極東の日本人が考えてもしょーがないことだとは思いつつ、悶々としていました。


コンサート開始直前、「本拠地のセヴェランスホールは音響が素晴らしく、ニュアンスを聞き取ることができます。セヴェランスホールは我々の楽器の一部なのです。」と、いつものアクセントの強い英語で話すメストさんの声が聞こえてくると、何だかほっとしたのであります。大学祝典序曲が終わる頃には中継前の不安な気分は消えていました。日中の眠気を承知で、2日間ともライヴを拝聴。未だ興奮は醒めることなく続いています^^


ヨルグ・ヴィトマン氏は2009〜2011年の間、クリーヴランドオーケストラのレジデント・コンポーザーでした。(アーティストインレジデンスも同じですが、適訳が不明のためカタカナ表記にしています。)
UK初演の本作品は、クリーヴランドオーケストラから委託を受け、首席フルート奏者のジョシュア・スミスさんのために書かれました。同年代でもあるお2人は非常に親密な間柄。スミスさんの意見も参考にしながら作曲されたようですね。

8楽章で構成され演奏時間はおよそ20分ほどです。現代音楽特有の混沌とした雰囲気やエッジの効いたサウンドの中に、メランコリックな音色やバッハの音楽が顔を出し、最後はバディネリで終わるというユニークな構成。現代音楽は私にとってはまだまだ未知の世界なのですが聴きやすい曲でした。フルートでこんな音色が出せるんだ、とただただ驚嘆するばかり。雄弁で色彩に富んだスミスさんのソロに陶然となりました。




メストさんとクリーヴランドオーケストラのメンバーが12年間で培ったサウンドが顕著に表れたのがメインの交響曲第1番。
メストさんが以前話していた「旋律を豊かに歌わせる感覚」を団員の方がよく理解して演奏しているというのでしょうか。第1番はブラームスが苦悩の末に書き上げた作品として重厚に演奏されがちですが、正反対の純音楽的な演奏に徹しています。どこまでもしなやかに、優雅に、丹念に。

以前WCLVで放送を聞いたときは何がしたいのかよく理解できず落胆しました。楽譜に書かれている音符が再現されているだけのような印象しか受けず、荒々しいサウンドのみが耳に残りました。
今回は全く違っています。綿密で流れの良い音楽に留まるのではなく、全体が瑞々しい色彩で覆われているのです。テンポを揺らしてブラームスの葛藤を表現するのではなく、音色にこだわっているように感じます。引き締まったダークサウンドでは内面の葛藤を、流麗な暖色系のサウンドではブラームスの心の平穏を。暗から明へのカタルシスの代わりに、肩肘を張らないブラームスの姿が浮かび上がってくるのです。
ブラームスの交響曲第1番はこの12年間の賜物と言えるでしょう。ブラボ〜!



UK国内でのテレビ放送、ノーカット版がアップされています。ありがたや。

Franz Welser-Möst - Joshua Smith -Cleveland...


BBC オンデマンドはこちらから


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。