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A journey through the subconscious mind of Gustav Mahler  -潜在意識をめぐる旅- (10/26 オンデマンド更新) [音楽]

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マーラー 交響曲第6番 イ短調 悲劇的
管弦楽 クリーヴランドオーケストラ
指揮 フランツ・ヴェルザー=メスト
マイアミ ナイトコンサートホール 2015年3月7日(?)のライヴ録音(10/26 更新 オンデマンドはこちらから(11/9まで)


マーラーは人生の絶頂期であった1903-04年に第6番を作曲した。
ウィーン随一の才女とも言われたアルマ・シンドラーと結婚し、第一子に恵まれ、そしてウィーン宮廷歌劇場の音楽監督として燦然と君臨していたまさにその時だ。
大作曲家を運命の打撃が襲うのは3年後だから、自分の将来を見越して作曲したと回想するアルマの証言は結果論的だろう。悲劇的という副題も少々紛らわしい。個人的には6番を聴いて悲壮感に打ちひしがれることはなく、むしろ何かをやり遂げた人間の勇姿が思い浮かぶ。不安、苦悶、悦楽、憤怒、憧憬。マーラーは心の中に内在するあらゆる感情を交響曲という形で見事に体現したのである。


ヴェルザー=メストは、本作を20世紀初頭のフロイトによる精神分析と結び付けて捉えてほしい、と演奏が始まる直前に指揮台の側から客席に向けて語っている。プレトークは一般的だが、演奏前に話すスタイルは初めてお目にかかったので正直びっくりしてしまった。「交響曲第6番はグスタフ・マーラーの潜在意識をめぐる旅なのです」と力説する。プログラムノートには載っていないからお話するんです、と前置きしてまで伝えるところ、フランツ先生の並々ならぬ思い入れがあるようだ。


14/15シーズンのマイアミレジデンシー、最大のイベントであるマーラー6番の演奏会がオンデマンドになったのでさっそく聴き直した。3/8のWCLVでは、3/6初日の演奏会が放送された。これがそのままオンデマンドになるものだと思っていたら、どうも違うようだ。プレトークの英語に相違があったのであれ?と思いつつ聴くと、トランペットがとある場所で音程を外したため、これは翌日の演奏に違いないと確信したのである。そつなくまとまっているのは確かに初日、第1楽章も初日の方が好みなのだけれど、凄みが増して圧巻の第4楽章となるのは2日目なのだ。まぁ何はともあれ、聴き比べは予想外だったので、思わず笑みがこぼれてしまった。


第1楽章。行進曲風の第1主題の後、1stヴァイオリンが不気味なほどに強く鳴り響き、不穏な空気を醸し出す。弦の響かせ方にはこだわりのあるマエストロらしい音楽作りだ。続く第2主題では、感傷的で悲痛な面持ちすら感じられる旋律をヴァイオリンセクションが艶めかしく歌い上げる。カウベルの音色が聞こえてくる中間部、コンサートマスターの甘美なソロが陶酔へと誘う。小休止も束の間、瞬く間に現実世界に引き戻され、畳みかけるように終盤へと向かうのである。ヴェルザー=メストのオケの煽り方が尋常ではないせいか、最初聴いた時は動悸が止まらなくなった^^;


中間楽章については、アンダンテ-スケルツォの演奏順序が採用さている。万華鏡のように変化する本作において唯一のオアシスであるアンダンテ・モデラート。リチャードキングさんのホルンと弦セクションがまろやかに溶け合い、至高の夢幻的な世界を作り上げる。キングさんのソロが今シーズン限りなのは本当に残念だ。
変わって激烈なスケルツォ。このテンポで音程が狂わず、アンサンブルが瓦解しないのは驚嘆に値する。首席代行から首席に昇格したDamoulakisさんの木琴が最高にカッコよかった。
チューバの杉山さんの厳かなソロが印象的だった第4楽章。最後まで一切弛緩することなく一気に駆け抜けた30分であった。高揚感と切迫感が漂う中、2回のハンマーの打撃を挟み、英雄の生涯が静かに幕を閉じる。



何かに取り憑かれたかのように突進するヴェルザー=メストの指揮に対し、オケは一糸乱れず完璧な合奏力で応えていた。最近ますます情熱的になっている気がするなあ、フランツ先生。
評価が分かれた1週間前のベートーヴェンとショスタコーヴィチのプロとは異なり、マイアミの各紙が挙って絶賛していた。今シーズンの私的ハイライトになることは間違いない。A memorable performance.


参考資料: The Cleveland Orchestra Miami Program Book





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